介護における食事介助の目的と考え方~己を知り他人を知る~
新入職員にとって食事介助は関門ともいえるのではないでしょうか?
無理矢理は出来ない、でも早くしないと後が詰まってしまう。イライラする自分にも苛立ちを感じてしまう。こんな場面は必ずあります。
ですがこれは誰しも通る道です。そしてもちろんこの関門を越えるための術は多く存在します。
そこで私の経験則ではありますが『お互いが負担とならないための食事介助』をするための考え方についてお伝えいたします。
利用者が感じる負担
『お互いが負担にならない』
この言葉を悪い意味で捉えてはいけません。負担という言葉はマイナスイメージが強く聞こえます。
しかし、時間のかかる介助は職員にとっては焦りや苛立ちによって精神的なダメージが大きいです。
ここで痛手を負うとその先の支援にも影響が出てしまうことも多いです。
そしてここでの更なる問題点は『利用者が感じる負担』についてです。それでは具体的にどのようなものなのでしょうか?
利用者の個別性
『利用者が感じる負担』
実は時間のかかる介助は利用者にとって負担です。介助によって食事を摂る利用者は多くの方が寝たきり状態です。
ベッドにて寝たきり状態が続いているのでもちろん体力も落ちています。
ここでいう体力低下というのは私たちのような100m走のタイムが落ちるだとかそういうレベルのものではありません。
生活の中で当たり前に行う行動(例えばトイレや食事)すらも疲れてしまうというレベルなのです。
「体力落ちてるからねー」という会話が施設内ではよく聞かれますが、正直言って新入職の方はイメージ付きにくいのでは?
簡単で目に見えるからこそ逆に感じにくいと言ったところでしょうか。
つまり、食事を摂る=疲れるという人もいるのです。なので利用者が疲れにくい食事の方法を考えなくてはなりません。
その為にぞれぞれの人に合った(個別性といいます)食事の方法を取ることが重要です。
無意識を意識する
では、個別性とはなんでしょうか?難しい言葉って嫌ですよね(笑)
しかし介護士はやたら難しい言葉や横文字を使いたがる傾向にありますのでこれは慣れましょう(笑)
さて、個別性にあった食事の方法についてです。
みなさんは自分が食事をする時どのように食べているか考えたことってありますか?きっと無意識ですよね。
その無意識の部分に注目してみてください。すると様々な工程があるかと思います。
まず、食事を見て匂いを感じ、どんな味か想像・期待しますよね?そして箸はどちらの手で持ちますか?利き腕で変わりますよね?
そして何から食べるか考え口に食事を運びます。食事を口に運ぶまでの間も器を手に持ち、口まで運ぶ人もいれば、おかずをご飯の上において一緒に食べる方もいるでしょう。
また、口の中に運んだら右と左どちら側で噛んでいますか?
ここまで、言えば恐らくわかった方もいるでしょう。食事を摂る工程は細分化すればするほど十人十色なのです。そしてこの細分化された工程の中にこそヒントがあります。
例えば、元々右利きだった人が麻痺によって食事介助が必要となったとしましょう。
介助者は右と左どちら側から食事を口元まで運ぶべきで、右側と左側どちらで噛むほうが本人は楽なのか。好きなものは後に残す派?先に食べる派?
このような情報を本人に聞く、先輩職員に聞く、ご家族に聞く、資料を読み漁るなどして一人の情報を自分でまとめると更に理解が深まります。
つまり、『お互いに負担とならないための食事介助』というのは時間をかけないために相手を知る努力をすることが一番の近道です。
最後に
まとめましょう。
- 自分が負担なことは相手も負担
- 個別性を考える
- 無意識に行っていることにもヒントはある
- 全てを疑え!
今回、あえて介助の技法を伝えなかったのはあくまでも今回は新入職の方にターゲットを絞っているからです。
おそらく技法そのものよりも技法を活かすために、利用者のどのようなところに着目して、どのような情報を頭に入れるのがいいのか、ということを知りたいのではないか?と思ったからです。
技法はあくまでも技法なのです。覚えてもそれを活かせる人や場面を知らなければ宝の持ち腐れになってしまします。
今回、この記事を読みより介護士としての専門性を高めていただければ幸いです。