介護における移動・移乗方法のコツ!秘訣は残存機能?
大忙しの施設介護。時間に追われて、さぁトイレだ、さぁごはんだ。
職員に車椅子へ乗せられて猛スピードで駆け抜けていくおばあちゃん。職員と手をつないでせかせかと急ぐおじいちゃん。
施設勤めの介護士さんなら見慣れた光景だと思います。時間に追われて笑顔もひきつり、内心は「急がないと仕事が終わらない!」と思っている。
現状の介護現場は厳しいものがあります。ギリギリの人員配置、高い離職率、未経験のスタッフ、などなど挙げればキリがありません。
一人で立てるのだけれども、時間がかかるから立たせてしまう。
歩けるのだけれども時間がかかるから車椅子で連れて行ってしまう。
時間や手間を理由にケアをおろそかにしてしまうと、ご利用者・介護者双方にとって不利益が生じます。
介助してあげて何が悪いの?
まず、本人ができる事を介助者が行ってしまうと、その人から活動する機会を奪うことになります。
身体機能は使わなければ低下していきます。手を使わなければ動かなくなってしまう、足を使わなければ歩けなくなって、立てなくなってしまう。
私たちも、風邪で数日寝込んだら、体が硬くなったり、筋力が落ちたりしますよね?
心理面では、ストレスを感じたり、元気がなくなってしまう方も。
もしくは「人にやってもらえばいい」と徐々に依存的になる場合もあります。
あれやって、これやってとずっと訴えている方、施設内に数人はいらっしゃいますよね?
色々理由があるでしょうけれども、職員がそのようにしてしまったのかもしれません。
何ができて、何ができないのか
全般的にいえますが「この人は何ができないのか?」そして「この人は何ができるのか?」を評価するのが大切です。
できることは、どんどんご本人にやってもらいましょう。
そしてできないことも、「ひょっとして、こうすればできるのではないか?」と考えて見ましょう。
環境を整えてあげれば、まだできることはあるかも知れません。ポジティブに考えてみてください。
移動動作
では移動動作について考えて見ましょう。例えば、歩行はできるけれども、やや安定しないから車椅子を使っている場合。施設では危ないからと安直に対応してしまう。
よくある事例です。確かに歩行不安定で独歩ならば、転倒リスクは高いです。
だけれども、車椅子をすぐに使うのはもったいない、安定して歩行できる方法を考えましょう。
杖・歩行器を使う。靴をより歩きやすいものへ変更する。動きやすい生活環境を作る。
他業種からも意見を聞いてみましょう。作業療法士から歩行評価をしてもらい、どの福祉器具が合っているのか、調整はどうすればよいかを教えてもらいましょう。
また看護師から医療面に関して聞いてみましょう。原因が疾患からきているのであれば、看護師と相談し医療面から対応していくことも大切です。
移乗動作
施設介護での移乗は、ベッド~車椅子間が一番多いのではないでしょうか?
例えば、軽介助でベッド~車椅子間を移乗している場合、介助なしで移乗を行うにはどうすればよいか?環境を確認してみましょう。
ベッドの高さは移乗しやすい高さになっているか?スペースは十分で、障害物となるものがないか?
福祉用具も有効ならば活用しましょう。手すりを設置する。L字柵を使用するなど。
介助に入る方も、ただ介助者が持ち上げて移すだけにはならないようにしましょう。
ある程度自分の体重支えられるのならば、介助者が全体重を持ち上げるのではなく、ご利用者にある程度体重を支えてもらいましょう、残存機能の活用です。
ここでも他業種との相談を忘れずに。多方面から評価することでよりよいケアができます。
終わりに
できる事をやってもらう、それが自立支援につながります。ADL(日常生活動作)の維持にもつながります。
少しでもご自分の力で生活して頂く、そうすればご利用者もいきいきします。
自分でできることが増えれば、介助量も減ります。そうすれば施設職員の負担も減ります。よいことばかりです。
しかしながら、移動・移乗動作は介護事故が多い場面でもあります。
だからこそ「何ができなくて」「何ができるのか」を評価(アセスメント)して、リスクを減らすこともとても大事です。そして無理強いはせず、ご本人に合わせての実施を行うことが望ましいです