床ずれを作らない介護方法とは?秘訣は間違った思い込みにあり!?
自由に動けなくなった方にとって、命に関わる問題となりうる「床ずれ(医学的に褥瘡とも言います)」。
床ずれができることで、ますます自由が制限され、時として命を落とす事態に陥ることがあります。
多くの場合においては、介護や福祉用具の使用で予防できるものですが、時々、間違った思い込みで床ずれにならないよう介護をされている方に出会います。
今回は、床ずれ防止に関する、よくある思い込みを紹介します。
寝かせきりではなく、座る時間があれば安心?
「寝かせきりにしていると、床ずれになってしまう。だから、座る時間を長くして工夫している」というご家族に出会ったことがあります。とても熱心に介護されてはいたのですが、「おしい」と言えます。座れば大丈夫という考えは正しくありません。
床ずれは、体が不自由な状況で、長時間の同じ姿勢によって、骨の出っ張りがある部分など、他と比べて圧力がかかりやすい部分の血行が悪くなることで起きます。
そのほか、低栄養だったり、浮腫や麻痺があったり、湿っていたり、擦れることが床ずれの発生しやすさを増大させます。
つまり、寝かせきりだけでなく、座らせきりでも起こるのです。
座る姿勢をとることは、要介護者の意欲や活動に繋がり、座り姿勢は心肺機能を高める作用があるので、積極的に行ってほしいものです。
そのためには、寝ているときの体位変換と同様に、座り姿勢が長くなるようでしたら、座った姿勢のまま除圧の介護をしてあげることが良いでしょう。
前方から支えながら、しばらくお尻を浮かすような介助、不安定であれば、ひじ掛けを持ってもらって倒れないように支えながら片方ずつのお尻を浮かせる介助をしましょう。
また、福祉用具でも、局部にかかる圧力を軽減する機能性クッションや、内部でエアが流動するクッションがあります。
介護保険のレンタルでもありますので、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談してみると良いでしょう。
お尻の床ずれ防止には円座が有効?
尾骨のあたりが赤くなる、座り床ずれ予備軍の方を介護するご家族から、円座の相談を頂くことが、未だに多いです。
そして、ケアマネージャーやヘルパーさん、看護師さんの中にも、お尻の床ずれ防止には円座という思い込みをされている方が、時々いらっしゃいます。
実は、この思い込みは正しくありません。
円座が今まで評価されていた点は、すでに出来た、出来かけている床ずれ患部に接触しないという点です。
しかし、床ずれは、局部の圧迫に加え、他の要素も影響するというお話をしました。
床ずれのリスクがある、思うように自分で動けない方にとって、円座は、穴の開いた部分にお尻が部分的に入り込み、その周囲の皮膚を引っ張りながら圧迫することで血行を悪くしてしまうのです。
つまり、尾骨付近にすでに床ずれができている場合には治りにくく、なっていない場合でも、皮膚を引っ張られるズレの力によって、新たな床ずれのリスクを生んでいるのです。
円座を検討するよりは、上記の除圧の介護や機能の高いクッションを検討しましょう。
マットを変えれば床ずれ防止の対策はバッチリ?
床ずれができた、できそう、という方に対して、マットレスを変えたら万事オッケーと思われている方も多いです。
繰り返しますが、寝返りが十分にできない方にとって、マットレスだけが床ずれリスクを高めているのではないのです。
おむつが湿っている時間が長くないですか?
いつもギャッジアップで臀部に圧力やズレが生じていませんか?
十分なカロリーが採れていますか?
汗をたくさんかいていませんか?
寝間着やシーツにしわがありませんか?
等々、確認すべきリスク要因は沢山あります。
エアマットや耐圧分散マットレスは、あくまで、寝返りの介助の補助をしてくれるものだと思ってください。
個々によって、床ずれの危険性の大きさや介護環境が違うと思います。それぞれに合わせて、マットレスの機能を選んだ上で、リスク要因を減らす介助を継続して行うことが重要です。
良いマットレスを使用しても、それだけでは十分に床ずれを防止できないでしょう。
まとめ
介護分野も新しい福祉用具や研究も進んでいます。
昔の常識が、現在の非常識となっている場合もありますので、しっかりとその道のプロ(私の経験上は理学療法士・作業療法士か、福祉用具貸与事業者の福祉用具専門相談員が良いかと思います)から新しい知識を取り入れましょう。
床ずれに関しては、一般的にブレーデンスケールという評価方法(床ずれが発生するリスクを客観的に評価する方法)が用いられています。
評価自体は慣れないと難しく感じるかもしれませんが、評価内容を確認し、どのようなことが床ずれの危険性を高めているのかを確認することで、床ずれ防止の知識が広がるでしょう。
福祉用具や介護サービスを適宜取り入れながら、床ずれを作らない介護を目指しましょう。